恋愛の神様

消えてしまった命を愛しむかわりみたいに、お互いに一緒にいる事を望んで結婚して愛し合った。

あれから、イイ頃合いになっても結局子供は出来なくて、互いに仕事で立場を持った辺りだったし

……どこかでお互いに子供の件は腫れものに触るようなトコロがあって、済し崩し。


彼女が仕事の都合で地方へ転勤になり、それを機にそれぞれに生活するようになり、戻ってからもお互いの仕事に融通が効く生活スタイルを維持して―――何気に別居となった。

嫌いになったわけじゃない。

ただ仕事でどうしても擦れ違うし、あえて一緒に生活する意義が見いだせなくなっていた。


時折会う彼女は旧友とか、長い恋人とか、そんな感じで、歳食って釈迦力に恋愛しようなんて時期を過ぎると尚更

―――貴重な存在だ。








彼女が昔、少女のような顔で『お城を立てるのが夢なの』と言っていたのを思い出す。

ああ、全くスゴイ女だ。

確かにココは会社のモチモンだが、総支配人としてここの誘致から、経営まで一手に担ってるんだから、ちゃんと夢叶えたんだもんな。

ココは、市街地近くの結婚式場。

何の因果か、ウチのブライダル部門の教会だ。

これは引き抜きやら、買収やら、色々諸々の経過を経て、この状態になっただけで、昔はこんなことになるなんざ、誰も思っちゃいなかったがな。

オクサンは現在、ココの支配人だ。

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