恋愛の神様


「ちょっと待ちなさいよ!五分……や、十分だけ待ってて!帰る支度してくるんだから!」

「帰るって……オマエ仕事いいのかよ。」

「イイに決まってるでしょ!アンタが誕生日に迎えに来るなんて一生に一度あるかないかの珍事だもの、何が何でも祝ってもらわなきゃっ!」


シツレイだな。

一生に………二回ぐらいはあるかもしれねーだろ。

部下の尻を叩くみたいにそう言いつけて颯爽と遠ざかっていく後ろ姿に俺は苦笑った。








「乾杯」


やってきたのは市街地のスカイラウンジ。

夜景を見ながらグラスを重ねる。


「ふーん。なるほどねー。」


マキは花束の薔薇を指で弾きながら愉しそうにクスリと笑った。


「アナタがこんな気の効いた演出がデキル人だなんて思わないもの。……そう、部下の入れ知恵か。」


今日出張から帰ってきた事やなんやを話していて、呆気なくネタがバレタ。

とはいえ、怒ってる様子もなく、寧ろ面白がっている。


「アナタが入れ込むくらいだもの、イイ子なんでしょ。」

「まーな。……実はちょっと手放すのが惜しい。」

「だぁめ。これは列記とした仕事ですもの。」


ツンと澄まし顔のマキに肩を竦める。

そう、仕事。

今、とある仕事依頼が本社であるウチに来てて、事もあろうか、営業課に回されてる。

そのために俺は適材者を探していたわけだが

―――この話は追々、だ。




< 130 / 353 >

この作品をシェア

pagetop