恋愛の神様
マキが思案深げに溜息を零す。
「でも、そういう子がアンタの飼育を買ってくれると周りは随分安心できるんでしょうけどねぇ。」
「バカ言えよ。雛鳥ごときに俺が扱えるかっての。」
居丈高に顎を聳やかす俺を、マキは「どうだか」とあくまで愉しげに目を細める。
「手練手管の有能な調教師がアナタを飼い慣らせるなんて思わないもの。寧ろ、そのくらいの子が適任なのよ。『パパはオマエが何かやらかさないか心配だっ』とか言ってウロウロしちゃうんじゃない?親バカ。」
「…………。」
にべもなく図星を指されて、ごまかすようにグラスを煽る。
離れててもなんもかんもお見通しかよ。
確かに、有能調教師なんざ端っから食い殺す気で対面するのが俺の性分だ。
それを証拠に一旦は上(上層管理者)に登ったが、飼い慣らせないってんで周囲も処遇に手を焼いていた。
見栄やら保身やら勢力争いなんかで窮屈なそこに嫌気がさして、結局自分から麓へ降りた
―――営業の管理者に。
そこそこ権力を保ちつつ、好き勝手やれるココは、上で化かし合っているよかずっと面白れぇ。
俺の性分にあってる。
「まー……バカな子程カワイイってのは本当だな。」
グラスを傾けながら俺はしみじみと笑った。
一課の連中も、学校じゃあ卒のない優等生で通ってたのかもしれないが、社会に出ればまだまだ。
鼻っ柱ばっか強くて、それでも必死に食らいつこうと躍起になっている辺りがカワイイんだよな。