恋愛の神様
「雨……降ってましたか。」
呆けた面持ちを上げますと、草賀さんがベッドから腰を上げゆっくり近づいてきました。
―――温かい。
何も言わず抱きしめられ、否も応もなくそう思いました。
抱きしめられる事で、自分が随分冷えていた事にようやく気付いたのです。
そりゃそうですよね。ただでさえ肌寒いこの季節に雨にずぶ濡れになったまま部屋でぼんやりしていたのですから、凍えていて当然です。
それなのにワタクシ、今の今まで気にしていなかったなんて……どこか壊れてしまったのでしょうか?
草賀さんはヨシヨシと子供を宥めるみたいに、私を優しく撫でながらおっしゃいました。
「オマエさ、失恋したんだよ。……チィちゃん多分、初恋?だったんだろーにさ。」
は……?
シツレン?
…………一体、誰に???
「森のクマさんに。」
私はきょとんとしたまま草賀さんを見上げました。
草賀さんはいつもより優しい顔で、少しだけイタイみたいに笑っています。
「……意味を計りかねます。だって……言うに及ばず、ワタクシこれまでどれだけ片思いをして玉砕してきたか。……それにどうして鹿島部長などと…」
今更失恋如きでこんなに壊れません。
しかも、ワタクシがいつ鹿島部長で騒ぎましたか?
「だからさ、オマエにとって今までのはノリてか、恋に恋するってか……運命の相手を探すっていう名目で、手当たり次第に突進してただけだろ。」
トントンと大きな手が背中をリズミカルに優しく叩きます。