恋愛の神様
草賀零於
※※※reo kusaga※※※
亜子と野山
―――二人の違いは一体なんなんだろーな。
テンションが上がりきらない月曜日の午前中。
俺は手持ちの書類をデスクで片付けながら、ぼんやりと思考を馳せた。
虎徹の婚約者に動揺して俺に逃げ込んだ亜子。
そして淡い初恋にも気付かず傷ついて俺に抱かれた野山。
同じ事をしても、全然違う。
亜子は自ら温もりを求めて手を伸ばしてきた。
本当は傷ついて逃げ込んできたくせに、それすら隠し通そうと微笑を浮かべ、あたかも俺との情事を楽しむみたいに擦り寄ってくる。
俺に抱かれながらも―――違う誰かを想っている。
だけど、野山は差しのべた手すら突っぱね、ゴメンナサイと謝る。
受けた傷が俺じゃない誰かの所為だと分かっていて、だからこそ、俺に慰められるのを罪みたいに苛んで。
オマエさ、自分じゃ気付いてないみたいだが、最中に何度も謝ってたぞ。
自分は満身創痍で人の事慮っている場合じゃねーだろ、と思うのに、野山はそれを潔しとしない。
別の誰かの事で頭は一杯のはずなのに―――俺を俺と認めて抱かれる。
誰かの代わりではなく、それが慰めだと知っていて、自分の都合で俺を慰め役にする事に罪悪感を抱きながらも、それをごまかしもしないでその通りに受け止める。
あまりに正当すぎて、時折どうしようもなく痛々しい。
傷ついても頑張って飛ぼうとする小鳥にどうしても手を伸ばさずにはいられなくなる。