恋愛の神様
亜子を抱いたのは入社してそこそこ経ってから。
最初こそ強引に。
ほとんど無理矢理に。
身体を拓いて快楽に堕とした。
回を重ねる毎に亜子は戸惑いつつもその関係を受け入れた。
その理由を俺は知らないわけじゃない。
本妻を取り巻く一派、そして虎徹を筆頭とした一派、どっちつかずの日和見、伊熊の子飼の忠実な犬達―――上層部の権力争いは熾烈を極め、その場所で立っているのは傍目以上に厳しい。
うっかりしていると足元を掬われかねない。
虎徹がどれほども切れ者だろうと、恋人に現をぬかしていられる程楽な場所ではないのだ。
そう言う意味では、その頂点に立ち、尚且つ愛人を囲っていた伊熊のバイタリティーには感服するが。
亜子はしっかりしているがそれほど強い女じゃない。
恋人に置き去りにされ人肌寂しいトコロを俺に付け込まれた。
それが亜子にとって幸か不幸か。
俺を愛しているわけではないのに、寂しさを紛らわせるために抱かれる。
虎徹を見限る決心もつかず、俺を拒否する勇気もなく、立ち往生。
ゴメンな。
もう少し待ててくれないか。
必ず決着は付けるから。
オマエが迷いなく俺を選べるくらいになってやるから―――。