恋愛の神様
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「失礼します。コチラ本日のメインディッシュとなります。」
白シャツに黒いスラックス、黒のボウタイ。
髪はジェルで後ろへ撫でつけている。
恙無く声を掛け、皿をテーブルに並べて行く。
断りを入れて空いた皿を持ち上げようとした時、紙を押し付けられた。
媚を含んだ上目遣いにニコリと営業スマイルを返し、受け取らない事で言外の拒否を示すだけしてさっさと身を翻した。
「君ってスゴイねー使えるねー。見栄えもイイしさ、臨時なんて惜しいよね。」
バックヤードに入るや、同じウェイターが横に付けて話しかけてくる。
「まぁ、ウェイターは学生の頃、人材派遣のバイトで経験したことがあるので……」
「あっそー。道理で様になってるもんな。俺なんか最初入った時なんか上がっちゃって皿落したしー。」
ところで……、とこれこそが本題とでもいうように悪戯っぽく覗いてくる。
「オタクが入ると参列者のギャル達が目の色変えてすごいのなんの。ま、分かるけどねー。どうなの?イイの引っかかった?」
「まさか。仕事中に引っかける程野暮じゃないですよ。」
さらっと笑顔で交わして、再び皿を手にそれぞれ散らばっていった。
結婚式場・ブライダルエクスプレスに来てから早二週間。
ブライダルフェアの企画と並行して、とりあえずブライダルの仕事を覚えなくては始まらないと、俺と野山は毎日アチコチに飛ばされている。
協力会社との取引を始め、客である新郎新婦とやり取りをするアドバイザーから、当日の式の手配、当日の式の段取りなど、内容はテンコ盛りにある。
今週にきて俺は式中のサーバー……いわゆるウェイターだ。
野山はプロ一人を付けてブライダルアドバイザーとして新郎新婦と式の企画に回されている。
先週は俺がそっちをやって野山がコッチをやっていたから単純に交代といえなくもないが、限られた時間を考慮して暇な時には他の仕事も覗いて場合によっては手伝わせてもらうので、かなりのハードワークだ。