恋愛の神様

午前中の式が終わって、昼の休憩の許しが出た。

本日は仏滅で入り数が少ないから、バイト生なんかはこれで上がりだ。

俺はクサクサしながら休憩室を目指した。

連絡先を記した紙をそれとなく差し出す参列者のオジョウサンなんかはまだカワイイ方で、昨日なんざマダムにケツ撫でられたっつーの!

ココはホストクラブじゃねーってんだよ!

俺が本物のホストなら、金ふんだくるトコロだぞっ。


休憩室に行くと野山が机にへなっていて、俺を見て「お疲れ様ですぅ」と覇気もなく呻いた。


「オマエも相当疲れてんな……」

「あぁあぁぁ……。式の催し物の件で新郎新婦が喧嘩になりまして破局の危機に……宥めるのに半日を費やしました。」


今更ながらに、コッチの仕事の方が格下みたいな発言をした事を悔いた。

営業も対、人だが、コッチの方が企業より個人寄りな分、利益よりも人間性が強く、難しい部分はある。

よしよしと俺は野山の頭を撫でた。

それは野山を慰めるためというか、一重に俺のストレス発散で、一心不乱にエアマット(プチプチ)を潰す行為と同じだ。

出来るなら腹辺りのふにふにを撫でたいところだがさすがに仕事中なので自制する。

と、がちゃっと扉が開いて、俺は未練がましく手を引いた。


「ひよ子ちゃん、一緒にランチに行きましょう。」


張りのある声を響かせて颯爽と姿を現したのは長身のスレンダー美人。

俺と野山を交互に見て、にこっと微笑する。


「勿論、草賀クンも一緒にどうぞ。」

「はぁ。」


俺はオマケかなんかみたいに二人はどこに行こうかと愉しげに相談を始めた。

愉しげな女性陣を他人事のように眺めながら思わず呟く。



「随分、野山を気に入ったみたいですね、鹿島支配人。」


< 151 / 353 >

この作品をシェア

pagetop