恋愛の神様
「よう。喜べ。陣中見舞い、だ。」
某牛丼チェーン店の袋をブランと翳して、にかっと笑うのは我が部長、鹿島五月。
……正直に言うとココには現れんで欲しいんだがなぁ……。
チラリと野山を見る。
野山は然して動揺する素振りもなく、「わーい♪」と手土産に手放しの歓声を上げた。
「肉っ好物ー。さすが部長、気が利きます!」
「おう。そだろそだろ。オマエこないだ買い込んだ弁当も肉系だったからよー、絶対肉食だと思ったんだよな。」
「はいっ!ガッツリ肉食です!!」
イイ様に餌付されてる野山に呆れる。
そんな傍らで鹿島支配人も幸せそうに目を細めてるし、傍から見ればホントほほえましい家族の図―――
てぇ、んなもんに見られてどーすんだ、野山のアホ。
一人ヤキモキしているのもバカらしくなり、済し崩しに四人で昼食を取る事になった。
空いている控室で、四人でテーブルを囲う。
「で?どうなんだウチのボンとひよ子は。」
ボン、つーな、ボンって!
俺は遠慮なく飯を口に入れながら部長を睨む。
この人はこれでいて以前は上層部にもいたもんだから、俺の事情を知っている。
だが、この人に至っては伊熊の子というステイタスなんざ塵ほどの価値もないのだろう。
阿る事もなけりゃ、腫れものに触るような態度もなく、俺は他の奴等と同様『ケツの青い半人前』だ。
ボンボンってのは―――一課に入った早早に『ガキの分際でスカシタ顔が気に入らねー』という理不尽な理由で付けられた呼び名だ。