恋愛の神様

部長の質問に、支配人が苦笑いする。


「ヤな上司だ事。本人の前で査定させようっての？」

「あったりまえだろーが。ンなモン、本人が聞かんでなんの価値があるってんだよ。」


悪びれもなく言い切られ、支配人は肩を竦めた。


「そうね。……草賀クンは『使える』わ。順応力があって器用だからどんな仕事させても直ぐに覚えて易々と上ランク、ウチの社員と比べても見劣りしないわね。常に冷静で、周囲の状況を見て立ちまわれる―――リーダーとか管理者の資質は高いかしらね。」


それから野山に視線をやって、眉を寄せる。


「ひよ子ちゃんは……言い難いわねぇ……」

「なんだよ、らしくねぇな。ズバッと言えや。」


首を竦める野山を余所に部長は他人事のように景気を付ける。


「ああ、そういう意味じゃなくて。……評価を付けがたいって意味よ。」


そこで俺と野山を見比べて、真っすぐに言った。


「今、どちらかを正社員で選べ、と言われたら正直、迷う。将来を見越して賭けろって言うなら―――私はきっとひよ子ちゃんを選ぶわ。」


野山は勿論、俺も驚いた。

ふふん？とどこか得意げに笑う部長は、この軍配を見越していたようだ。