恋愛の神様
支配人が阿るように俺に微笑を向ける。
「無論。現段階で能力を考えたら草賀クンの方が上よ?そして多分、アナタはどこの会社でも上層部に上がっていける人物だわ。それに比べてひよ子ちゃんは……この間もお皿割っちゃうし……」
はぁ、と支配人は溜息を吐く。
「一生懸命なわりに不器用だし、失敗は多いし、どうしたもんかとは思うけど……」
部長に睨まれて、野山はぅっ……と首を竦めた。
「でもね。オモシロイの――――アナタの発想が。」
支配人はきらっと目を輝かせて身を乗り出した。
「アドバイザーの様子を見ていてつくづく思ったわ。実現できるかはさておき、よくもというほど突飛な案が出て来て……相場を知っている私達が端っから捨ててしまうような案も。それもね、アナタのスゴイのは、突飛ながらも実現不可能でないレベルに利益も考えて仕立てるトコロ。あんまりいないわよ。ロマンとリアルをイイ具合に兼ね備える人間って、ね。」
にこっと笑う支配人はやり手の経営マンの目をしていた。
「この業界はね、常に新しい物を考え出さなきゃいつか壁にぶつかるわ。アナタの発想力は、その壁を突き破る可能性がある。それは手先の不器用さとかどん臭さを上回る能力よ。」
なるほどな………俺は人知れず嘆息した。
「まぁな。」と部長が楊枝でしーしー言いながら、しみじみ頷く。
「オマエもどっちかっつーと大雑把で不器用だしなー。」
「ちょっと!真面目に話してるんだから腰を折らないで頂戴な!」
支配人は少し頬を赤らめ食ってかかった。その拍子に缶のお茶が倒れて、テーブルに広がる。
「ドジ。」
部長がホラ見たことか、と勝ち誇ったように笑いながら、ハンカチを水溜りに投げた。