恋愛の神様
冷静になってくるとさすがにちょっといたたまれません。
あのぅ……そろそろ着替えて来てもよろしいでしょうか?
エプロンの裾をもじもじと弄いながら、床に蹲ってヒクヒクと震えている姿をぼんやり見下ろしておりますと、手招きされました。
「……なんですかぁ?」
訝しげに近づくと不意に視界がぐらっと揺れました。
「……っん……」
気が付いた時には床に押し倒され、貪るように唇を塞がれていました。
あ、久しぶりの草賀さん。
形状記憶合金のようにその感触をしっかり覚えている身体は、それだけで蕩けてしまいそうです。
深く噛み合わさった口内で、互いの舌が忙しなく絡み合います。
歯列をなぞって、舌の輪郭を辿って、吸い上げられて、ジンと頭の奥が痺れました。
が、レースをたくしあげて太ももを上がってきた掌に、我に返り咄嗟に押し留めました。
ひぇぇええ………!
いくら久しぶりだったからと言って、そこはたかがキスくらいではしたないほど濡れてしまいましたもの。
それに、それに……
「ま、待ってくださひっ!スミマセンッ、ワタクシちょっとしたウケ狙いでっ!決して誘惑したつもりじゃあないんですケドッ!」
お疲れだと自己申告した草賀さんに無理強いして抱いて貰おうなんて企んだんじゃあないんです。
本当に。
ほんの少しでも楽しんで頂けたら、と考えただけなんです。
耳の弱い辺りで、草賀さんがふっと笑います。
……だから、そこ弱いんですって。
止めてくださひっ。