恋愛の神様

            猿田悠介




※※※yuusuke saruta※※※




『激安』・『ヘルシー』・『絶品』の三拍子揃った社食にて、トレイを受け取った俺は、食堂内を見まわした。

ちぇ、満席かよ。

そこでたまたま顔見知りとも言えない知った顔を見つけて近寄る。


「よ。久しぶり。相席させてくんね?」

「……どちら様でしたでしょうか。」


慣れ慣れしく声を掛けた俺を訝しげに見上げる冴えない女子社員。


「ひっでーな。こないだ一緒に飯食った仲だろーよ。ま、今日はお目当ての河瀬さんはいねーけど?」


その説明で相手は恙無く俺の正体を把握したようだ。

先日、上司である河瀬さんと一緒にここへ仕事で来たついでに飯を食った時に一緒になったのだ。

コイツ自分のランクを鑑ず、俺の上司である河瀬さんに一目惚れしたようだが、とんでもねぇ偶然とタイミングでマーケティング課の根岸さんに隣から掻っ攫われて―――俺的には笑うに笑えねーし、いまいち同情する気にもならんし痛し痒しの展開だった。

でも意外にコイツの事はキライじゃないんだよな、個人的に。

こないだの時もそうだったけど、気弱そうな外見に見合わず、ジメジメしてるわけじゃないし、言う事言うし、結構頭の回転はよさそうだし。

今話してみてもその感想は同じ。

媚を売ってくるわけでもなく平板に返してくるが、冷たいというわけでもなくて、妙に的を得ているから心地よい。

最近あまり見かけないと思ったら、支社へ派遣されていて本社への出社は久しぶりとの事だ。

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