恋愛の神様
「あら?草賀さん、自宅はこちらでしたか?」
一緒に歩き出した野山は小鳥のように小首を傾げた。
「んー?ちょい野暮用。」
それだけで野山は経緯を察して眉を顰めた。
「あまり遊びが過ぎるとそのうち酷い目に合いますよ。」
恋愛目標をコロコロ変えるくせによく言うよ、と思いつつ「へーへー」とお座成りに甘受しとく。
棚上げだが、言っていることは正論なので。
昼間のやり取りを思い出しぷっと吹き出す。
「ところで。オマエなんか変なモンにでも取り憑かれてんじゃね?一度見てもらっちゃどうだ。」
繁華街へ向かう途中、道脇に易者を見つけて顎をしゃくる。
野山はそれこそ小鳥のようにむっと唇を尖らせた。
「その手の物を見るのは大抵、坊主です。て、変なものなんて断じて憑いてなどおりませんとも!これまでの敗因は、単に相手がワタクシの運命の相手ではなかったからです!」
「そーかね。」
「そーですとも!運命の相手が目の前に現れたらば、たちどころに二人は恋に落ち、固い絆で結ばれるのです。」
一体何の夢物語だ、そりゃ。
失笑する俺の脇で野山は滔々と夢物語を語り続ける。
ガタン!
物凄い音がして俺と野山は後ろを振り返った。
と、易者が椅子を蹴倒し愕然とした面持ちでテーブルに身を乗り出していた。
視線が向かう先は野山小鳥。