恋愛の神様
「彼女は?紹介してくれない?」
挑発的に尋ねると悠介はちょっとだけむっと眉を顰めてぶっきらぼうに言い捨てた。
「ここの社員。俺のカノジョ。なんか文句あっか。」
彼女?
カノジョ!?
これが!!
お互いを探り合うように見詰める二人。
先に折れたのは悠介の方で―――じっと見つめる眼鏡の奥の黒目から逃げるようについっと席を立った。
「俺、もう行くし。席どーぞ。」
それに私は愕然とする。
どうして逃げるのよ!
せっかく話掛けたのに!
久しぶりに口きいたんじゃないっ。
……………そんなに私の事が苦手なの?キライなの?
悔しさにくっと唇を噛み締める。
そんな私を余所に、冴えない彼女が悠介に声を掛ける。
「そういうおつもりならどうぞ。ワタクシはその選択に物申す気はありません。ですが、どういう結果になろうともワタクシに押し付けて逃げ出した事、後悔しないで下さいね。」
意味深なセリフに悠介は一瞬怯んだが、軽く手を振るだけして去って行ってしまった。
遠のく後ろ姿に、私は力が抜けたみたいに椅子に腰を落とした。
どうしてなんだろう。
悠介はどうして私を嫌うんだろう……。
そう思ったら、途端に隣の女との差を思い知って、堪らなくなった。
「……によ。ブスのくせに。」
「はぁ……。確かにブスですケド、初対面の相手を平然と面罵する女より性格はブスじゃないです。」
まさか泣きそうな顔で縮こまるくらいだろうと思っていた女が、平然と言い返してきた事に唖然とした。
そして言われた事を反芻してやにわに腹が立った。
酷い事を言ったという自覚はあったけど―――。