恋愛の神様
「何よっ!悠介ごときの彼女が思い上がらないでよね!!」
ヒステリックに叫んで、思わずお冷を持つ手に力を籠めた。
けれど、一思いにぶちまけようとする前に横槍が入った。
「よぉ、チィちゃん。丁度イイトコロで会った。相席させてくんない。」
このタイミングに一体誰が何の用よ!と睨みつけ、トンデモナイ美形に目を見開く。
やだ。モデル並みの美形だわ。
二之宮専務もイイ男だけど、この人も甲乙つけがたいくらい格好良い。
呆ける私を余所に、チィと呼ばれた冴えない女子はにこりと笑顔を返した。
「これから修羅場になりますが、それでよろしければどうぞ。」
私はギョッとした。
ちょ、アンタ、修羅場るとか言うんじゃないわよ……。
カレはちょっと考えた風な顔で肩を竦めた。
「それがオマエの意志ならいいや。ま、隣で大人しく飯食わしてもらうわ。」
ちょっとー。いいやってなによ!?
女二人が修羅場るとか言ってんだから止めようと思うのが男ってもんでしょーっ。
内心で不満をぼやいたのが聞こえたみたいに、カレはトレイから視線だけを上げ、ふっと口先で笑った。
「んー?コイツさ、結構賢くて理由なく突く小鳥じゃねぇから。突くとしたらそれなりの理由があンの。その上での揉め事なら他がとやかく口挟む義理じゃないだろ。……まぁさ、前みたいに相手の勝手な言いがかりでイジメられてるなら見過ごせないカナ、と思ったんだけどな。」
「やっぱり。草賀さん、心配してくださったわけですか。お心遣い有難うございます。でも大丈夫ですよ。」
そ?とカレ―――草賀さんはそっけなくも宣言通りランチを食べ始めた。
そして
「では、始めましょうか。」
コチラもチィ子の宣言通り修羅場が開始した。