恋愛の神様
「えと、まずなんてお呼びしたらいいでしょうかね。」
「知らないわよ。」
「では、ブス子さん―――」
「アンタに言われたかないわよっ!!」
「では性格ブス子さん―――」
「阿藤、…阿藤美弥よ!」
では美弥さん、とチィ子が改まった顔でマジマジと私を覗きこんだ。
「猿田さんがお好きなんですか?」
とんでもない直球に不意を突かれて、カァーッと頭まで熱くなる。
「ちちち、ちがっ、べべべ別に私っ……」
「ワタクシに対するアナタの態度はどう見ても『悠介さんの彼女』に対する嫉妬ですよね。とても分かり易いです。」
「…はぁ?オマエ彼氏デキタのか?」
「成り行きで。……その辺りは後でご説明致しますので大人しくしていてくださいね。」
怪訝な顔の草賀さんに、チィ子は淡々とそう言った。
「でも阿藤美弥さん、アナタは現在二之宮専務とご噂になっておりますよね?つまりそれは―――二之宮専務をダシにして、猿田さんの気を引こうとしていらっしゃる―――ということですか?」
ギクッと心臓が跳ねて、赤くなった顔から今度は血の気が引いた。
「べ、別に……気を引こうとしたわけじゃ…」
「はぁ、まぁ、相手の気が引けなかった場合、単なる当て付けの空振りですものね。滑稽過ぎて公言するに出来ない状況でしょうとも。」
にべない言葉にカッとした。
「うるっ、ウルサイわね!アンタに何が分かるのよ!てか、悠介の趣味がさっぱり理解できないわよっ!何でアンタが好かれて私が嫌われるの!?…私の何が気に入らないってのよ……」
悔しくて惨めで最後は涙声になって掠れた。