恋愛の神様
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小さい頃は社長という無駄な肩書が付いたウチが大っきらいだった。
売りはパパの誠実さと堅実さ。
その人間性に集った社員の中にセンスの良い建築士がいて、ウチの会社も業界では一躍有名になったんだけど。
いっちゃえばパパの代でにわか成金ってやつだし、どだい資産家の根っからの金持ちとは質が違うもの。
パパは相変わらず実直が取り柄のオッサンだし、ママはパパの会社が忙しい時分に経理を頑張っていたけど家事の方がスキといって引退して家でガーデニングに生き甲斐を見出している単なるオバサンだし。
そんな二人に育てられた私が生粋のお嬢様なワケがない。
だけど、友達やその親はそうは思わなかった。
お嬢様、お嬢様って言われて―――いつの間にか私もみんなが期待するお嬢様を演じるようになっていた。
強気で傲慢で鼻もちならないお嬢様。
これが本当の私なの?と思いながらも、ちょっと違う事をすると「らしくない」と言われて、なんとなくこうであるのが正しいんだ、と幼心に思い込んでいた。
みんなにちやほやされるのが当たり前になっていたのに悠介だけは違った。
他の女の子となんら変わらない接し方。
寧ろ、金持ちというステータスを翳す私を呆れたようなバカにするような顔で見た。
他の女の子と同じように接してくれる事に嬉しさ反面―――もどかしさ反面。
お嬢様としての特別扱いなんて欲しくなかったけど、他の女の子と同じ扱いは悔しかった。
気にして欲しい。
他の男の子みたいに私の事、特別扱いして欲しい。
悠介の『特別』が欲しいの。
それで気付いた
―――私、悠介がスキ。