恋愛の神様
「す、すごい………素晴らしい!」
易者は感激に震えて叫んだ。
「貴女には恋の女神が憑いておる!」
俺と野山は顔を見合わせる。
この人、ヤバい人でしょうか?
いや、新手の押し売りかも。勝手に占って、後で法外な料金を請求、とか。
…逃げましょうか?
野山と俺はアイコンタクトでそこまで会話した。
易者は不審人物扱いを受けている事など全く意に介さず叫び続けている。
「貴女の意志に関わらず、貴女に関わった恋する者達は恋を成就させる事間違いなし!恋に迷う者は恋を見つけ、恋に焦がれる者はその胸の内が意中の者に必ずや届き、恋に破れた者は新たな光を知ることでしょう!!これはもはや貴女が恋の女神!あなたこそが恋愛成就の女神なのです!!」
何だコイツ…とあからさまに不審に思っていた俺も、その言葉に不図想いを過らせる。
そーいや、コイツが告るヤツ、告るヤツ、他の女と纏まってなかったか?
今日の山田にしても然り。
ま、偶然だろうが…。
野山は改まった様子でコホンと咳払いして、その遠慮がちな仕草とは裏腹に興味一杯に机に身を乗り出した。
「そんな突飛な話よりワタクシの恋愛模様です!ワタクシの運命の人は何処に!?いつお会い出来るのでしょうか!?」
「なんという数奇な宿命!貴女の様な珍しい運命の人物に出会えるとは私も易者冥利に尽きるというもの!」
「いえ、ですからワタクシの―――」
「ありがたや。ありがたや。」
いきなり拝みだした易者に野山は煩わしそうな溜息を一つ。
「ワタクシ、その手の非現実的なモノは信じない性質なので!失礼します。」
自分の恋愛事情を聴きだそうとしたくせに良く言うよ……。