恋愛の神様
野山は未だ拝んでいる易者を無視して、すたすた歩き出した。
「ヨカッタな。恋愛の神様だとよ。」
くくっと笑う俺を野山は忌々しげに睨みつける。
「人の幸せより自分の幸せ!人の幸せで満腹感はえられません!」
それだけ言って足音荒く駅に向かって歩き去った。
途端、コンクリの些細な段差に躓いている様を思い出し、俺はブッと噴き出した。
「なあに?思い出し笑い。」
サイドボードのペットボトルに手を伸ばしながら亜子が不思議そうに訪ねる。
場所は繁華街の外れにあるシティーホテル。
傍にデカイ公園もあって窓から見下ろす緑が綺麗だ。
内装も落ちつきがあって小奇麗で、二人して及第点を付けたトコロ。
お約束みたいに逢瀬は決まってココだ。
お互い一人暮らしだが、職場から移動するには微妙に距離があって……
それより罪悪感の分、互いのテリトリーに踏み込むことに気が引けていた。
ちゃんと決着付いたら堂々と部屋に連れ込むからさ。
それより二人で一緒に住めるトコロを見つけっか。