恋愛の神様
野山小鳥
※※※kotori noyama※※※
午後一から草賀さんとブライダルの企画を詰め、夕方になりそれぞれ自分の課へ戻りました。
終業まで課の仕事をお手伝いです。
ワタクシはブライダル派遣中ということでコチラの仕事は片手間で許されていますが、草賀さんは当たり前に仕事が割り充てられているようで、ワタクシには到底及ばぬ程多忙なようです。
こういう時、デキル男というのも大変ですね。
それはそうとクマ部長、人を扱き使う事に容赦がありません。
「………おや?」
終業直前、キーボードをリズミカルに叩いていたワタクシの元へ一通のメールが届きました。
資料室からとある資料を持ってきてほしいとのことです。
名前はありませんが、秘書課からでした。
この帰り際に飛び込み仕事なんてツイテません。
しかし無視するわけにもいかず、課長に断って資料室へ向かいました。
古い資料の詰まった部屋はどことなくカビ臭く、暗さも手伝って辛気臭さが充満しております。
さっさと資料を探して帰りましょう。
ワタクシの探す資料は、部屋の中でも更に奥で壁に仕切られた小部屋にあります。
埃を立てないように幽霊のような動きで資料を探してファイルを幾つか取り出してゆきます。
腕に三冊程の資料を抱えた時、静かな部屋に扉の開く音が小さく響きました。
そうっと遮蔽物から顔を覗かせて、怪訝に眉を顰めました。
草賀、さん?
営業課ですので、ココへの出入りがないわけではないですが、大抵、書類整理は営業事務課の仕事ですので、営業課の人が直接ココへ来る事はメズラシイと思います。
しかも、ワタクシが珍しくこんなトコロへ来た時に来るなんて、かなりの偶然です。