恋愛の神様
静かな部屋に霞む水音。
「ぁ………んっ……」
甘く掠れた声。
耳を塞ぎたくともファイルがあってそれも適いません。
どんな事をしているのかは想像に易い衣擦れの音が微かに聞こえます。
呼吸が上手く出来ない。
足ががくがくとして、壁に凭れる事でなんとか自分を支えます。
―――イヤです!
ヤメテください!
聞きたくない。
知りたくなんてありません。
草賀さんがモテル事など承知の沙汰です。
一緒にいる時にも時々女性と思しき相手から連絡がある事も知っています。
そんな時はなんてモテル人なんだろう……と感心するに留まりました。
それは全くの他人事で、まるで異世界事だったのです。
―――否、
ワタクシは多分、意識してあまり考えないようにしたのかも知れません。
だって草賀さんは格好良くて、ワタクシは彼にとって並みいる女の一人に過ぎないのですから。
いつも遊んでいる煌びやかな女性と違った毛並みが新鮮で構ってくれるのだとしても、そのうち飽きるのだと分かっていましたから。
あまり深く考えず、構ってくれる間は十分に堪能しよう―――カレが与えてくれる快楽を。
そう、思っていました。
草賀さんにはとても綺麗な女がお似合いです。
ワタクシではまるで釣り合いが取れませんもの。
そんな事、ちゃんと分かっていた筈なのに―――