恋愛の神様
ワタクシはきっといつの間にか、草賀さんに恋をしていた。
それは運命の相手だから、というわけではなく。
一目惚れとかいう一瞬にして発火する浅はかな熱でもなく。
ゆっくりと世界を明るくする朝日のように静かにワタクシを浸して、満たして。
ワタクシが冴えない女であることや、釣り合わないなんて事実も蹴倒して、草賀さんがワタクシ意外の誰かを愛する事に全てが崩壊してしまうような衝撃を与える程に、草賀さんに心を奪われていたのです。
ワタクシは深呼吸のように静かに息を継いで、涙でぼやけた天井を仰のきました。
―――草賀さん。
その女性はアナタに取って大切な方なんですね?
先ほどほんの少し垣間見た草賀さんの表情はとても優しく、少しだけ取り澄ました男の貌。
壊れ物を扱うような恭しい口付け。
ワタクシ、伊達に片思い連敗保持者ではないんですよ。
一過性の女性に向ける態度ではありません。
無論、玩具のように見下ろすワタクシのような相手に向ける砕けきった態度でもありません。
その姿はきっと―――希う相手にしか見せない。
ワタクシが無意識なりに部長に見せていた態度と同じなのです。
認められたくて、無様な姿は見せたくなくて躍起になってカッコウを取り繕って、その実、従順―――相手にどこまでも弱い。