恋愛の神様
草賀さんにそんな相手がいた事を、ワタクシが責める権利は全くありません。
だってワタクシはこれまでそういうつもりで対面してきませんでしたもの。
しかし―――
ワタクシには言う事を言うべき相手がいます。
カラクリに気付いてしまいましたもの。
どういう経緯でワタクシと草賀さんの事を知ったのかは分かりませんが……。
ぎゅっと目を瞑って、深い息を継いだ後、ワタクシは業と足音を立てて小部屋から出ました。
二人は身動きを止めました。
ワタクシは奥歯を噛み締め、表情を変えるのを堪えました。
乱れた衣類。
上気した肌。
淫らでも十分観賞に耐えうる二人に、胸の奥がシクリと痛みます。
「………チィちゃん………」
唖然と呟く草賀さん。
ワタクシは真っすぐ見据えるフリをしながら、堪えられずほんの少し視線をずらしていました。
「お二人がどういう関係かなどとは詮索致しません。ワタクシには介入の余地のないことですもの。無論、他言も致しません。」
ダメ、です。
平静を取り繕うとしても声がどうしても震えてしまいます。
「―――ですが」
それでもありったけの理性を装って、ワタクシは足を踏み出し、二人の睦合う簡素なテーブルにファイルを叩きつけ、ワタクシを見詰める女性を睨みつけました。
「二人がどんなご関係であろうと、―――こんなやり方をする貴女がワタクシは嫌いです!」