恋愛の神様
「…………俺が、悪い」
深く息を吐き、努めて静かに言った。
亜子が寂しがり屋だというのは分かってる。
虎徹には仕事を理由に袖にされて、俺までもが野山に取られると思ったんだろ。
俺の事を愛してないくせに、それでもお気に入りの玩具が誰かに取られるのは我慢ならなかったか。
それを直接俺に言えない程に、亜子はプライド高くて、臆病者、だ。
そんな女だって分かっていた筈なのに、多忙を理由に気易い野山を構ってばかりいて、亜子を放っておいた俺がバカ、だ。
「けどな………俺にも、勿論、オマエにも、アイツを傷つけていい権利なんてなかったんだ。」
野山にあんな貌をさせていいわけない。
俺と亜子の付き合いなら二人の間で解決すべきだったんだ。
野山を巻きこんで、一方的に傷つけていいはずはなかった。
絞り出した声に背中で亜子が身じろいだ。
俺を引きとめる手にももう力はない。
俺は全てをそこに置いて、部屋から出た。