恋愛の神様
俺は野山を探した。
絶対傷ついてるに決まってる。
セフレだと割り切っている節もあったが、まともに目の当たりにしてどうも感じないわけはないんだ。
部長に傷付けられた時は俺が慰めてやったけれど……
じゃあ、俺に傷つけられた野山は一体誰が慰めるんだ?
あてどなく探し回って、そのうち廊下で立ち止まった。
……俺は野山を見つけて
……何を言う気だ?
亜子と関係があるって?
それでもオマエといるのが気楽なんだ…って?
ンな傷の上塗りみたいな事言ってどーしようってんだ。
謝って………それから俺はどーする?
野山から手を引くか?
俺の手から青空へ飛び去る小鳥。
とても元気に。
俺に懐いていた筈の小鳥は自由を得た途端、俺の存在などまるで忘却したふうで振り向きもしない。
脳裏を過った光景に胸の奥が疼いた。
イヤ、だ。
それが傲慢だと分かっていながら許せないくらいに、野山の存在は俺に不可欠なモノになっている。
今更そんな事に気づいて愕然としてしまう。
自分の迷いに足はとうに動かなくなっていた。
決めた場所があるなら、その道が多少険しくても突き進むのが俺の性分だが、行く先が定まらないんじゃ手も足も出ない。
……とりあえず考えが纏まるまで保留。
そんな決断を下す程に及び腰だ。