恋愛の神様
思わず呟いていました。
途端、歌がピタリと止まって、男が物凄い勢いで振り向きました。
いや、そこ、欄干の上なんですけど!?
しかし突っ込みも忘れてしまいました。
勢いよく振り返った所為で男のキャップが風にフワリと浚われました。
白い―――雪のように真っ白な髪。
そしてワタクシを射抜く双眸は夜目にもそうと分かる赤。
その奇異な容姿はともかく見覚えのあるその顔にワタクシは唖然と目を見開きました。
「…『バニーb』のハクト…………さんっ!?」
無論、見覚えがあると言っても知り合いなんかじゃありません。
『バニーb』とは今、大人気のアーティスト…歌手です。
今目の前にいるこの人そのものであります。
系統としてはロックからホップでしょうか。
カレ自身は単体ですが、歌に合わせて色々なバンドとコラボします。
カレの為に編成されるバンド―――なんて、他のメンバーにしてみれば付け合わせみたいですけど。
それでもカレと組みたいといってそれはそれは腕のあるアーティストが名乗りを上げる程ですから、その歌声は相当のものです。
力強くもあり、滑らかでもあり、かと思えばとても灰汁があったり、繊細だったり。
不思議とどんな歌にもマッチする魅力を持っているのです。
かく言うワタクシもキライではありません。
数年前のドラマの主題歌は未だにお気に入りですもの。
ちなみにハクトとは白兎と書きます。