恋愛の神様
面倒くさそうに視線を上げたお嬢様は肩を竦めました。
「アンタには悪いけど、そのままにしてあげてくれない?この子、ここ数日碌に寝てないから……」
「有名人と言うのもお忙しいですね。」
お嬢様の顔に憂いが過りました。
「違うわよ……いえ、忙しいのは事実だけど。仕事の合間にピーを探し回ってね。私が探しておくって言っても聞かなくて。ただでさえハードワークなのに、ちゃんと休息も取らないで。」
その憂いた表情にワタクシはおやっと小首を傾げました。
「ピーが楽屋から姿を消してから約一週間、か。シロが脱走する度、探し出すのに苦労するわ。今日だって、この子が脱走しないように見張ってたんだけど、ラジオゲストの収録の途中でまんまと逃げられたわ。」
それでも……と続けたお嬢様はどこか諦観が滲んでおりました。
「仕方ないかもね。シロにとってピーはとても大切な存在なんだもの……」
「ピー……さんというのは、どちら様なんですか?」
ハクトさんの態度を見る限りどうやらそのピーさんとやらと人違いをされているように思われます。
そして話を聞く限り、とても愛していたように思われます。
ハクトさんの愛する方に似てるなんて、ちょっと悪い気はしませんね。
「シロが飼ってた鳥よ。」
………て、トリッ!?
「あのぅ。……ワタクシ、翼も嘴もありませんが?」
「そんなの見りゃ分かるわよ。でも、言われれば確かにあのオカメインコに似てるかもね。」
「………オカメインコ………」
あの頬がグリグリと赤い、田舎娘みたいなヤツですか。
よりにもよって。
そりゃ、ワタクシがクジャクや白鳥と肩を並べられるなどと思いあがったわけではありませんが……。