恋愛の神様
愕然とするワタクシにお構いなくお嬢様は改めた様子で言いました。
「そこで物は相談なんだけど、アナタに暫くシロのピーになってもらうわ。」
「それは相談じゃなくて命令です。……て、イヤです。断固拒否させて頂きます。」
当然でしょうとも。
何を好きこのんでペットに志願しましょうか。
しかし、さすがはお嬢様。
人の話など聞いちゃいません。
「これ以上シロに仕事に穴を開けられちゃ困るもの。目下ピーがいればシロも脱走しなくて済むわけだし、一件落着ね。」
「冗談じゃありません!第一ワタクシにも生活というものがあるんです。無理です!」
「アナタの生活?どうせ大したモンだとは思えないけど一応聞いてあげるから説明しなさいよ。」
その居丈高な物言いにカチンときました。
「……確かに桁違いの金を稼いでライトの中で輝くようなアーティストの生活に比べれば大したことはない人生です。けれど、ワタクシの生き方を人にとやかく言われる筋合いはありません。」
歯向かわれたのが予想外だったのか、お嬢様は一度押し黙りましたが、次には「で?」と平板に尋ねてきました。
「そこまで分かってるなら簡単じゃない。そうよ、アンタの人生も私の人生も『バニーbのハクト』に比べれば大したもんじゃないの。そのショボイ人生が『大した事あるハクト』の人生の糧になるんだから有効的でしょ。」
くっ……このお嬢様、口が立ちます。
しかも頭の回転も早いです。
このワタクシが屁理屈で負けるとは……!
何より、歳下とは思えない迫力。
どこまでも冷徹な態度に気圧されます。
「で?アナタの大したことない生活って夢も目標もない安月給のOLを淡々とこなす事?」
「そ………そうとも言いますけど。」
与えられた仕事はキッチリこなしますけれど、それで上にのし上がろうとか、この先どうしようというビジョンはまるでなく、冷静な言葉で言い表すとそんなカンジになってしまいます。
しかし人に言われると何だかとても悔しいデス。