恋愛の神様
あまりに予想外の返答に思わず電話を掛けていた。
このメールの真意を確認しておかない事にはどうにもこうにも気持ちが悪い。
だが―――
『お客様のご都合によりこの電話は取次出来ません。』
着信拒否を奏でる無機質なアナウンスのオネェサンの声に俺は愕然となった。
俺と口も聞きたくないってか。
自分のした事は十分に分かってるつもりだが、かなりショックを受けた。
しかし時とともにショックはじわじわと苛立ちに変わっていった。
コッチから折れようって下手に出てるのに、何様だ、アイツは!
オマエは潔く割り切るつもりかもしれねぇけど、コッチはそーじゃねぇんだよ。
なのに勝手に話畳んでんじゃねぇっての!
冷静になって考えれば、これは随分傲慢な言いがかりだった。
自分でもあまり自覚のないトコロだが、きっと俺は野山なら何をやっても赦してくれると思い込んでいたんだろう。
野山にとって俺は特別だから何をやっても大丈夫。
否、野山は器がデカイから俺のいい加減なトコロも仕方ない人だ、と済ませてくれる、なんて。
……とんだ思い上がりだ。
だが少なからず平静を失っていた俺はそれに気づく事もなく、野山の一方的な拒否に大いに腹を立てた。
アイツに見限られたのだと認めたくなくて、怒る事でその事実をごまかした。
「知るか、あんな奴。」
コッチからは二度と連絡なんかしねぇからな。
意固地になりつつ、結局携帯が気になってしかたなかった。
まぁ……コッチからは電話する気はないけど、そっちが掛けてくるなら出なくもない…。
そんな誰の為だか分からないマイルールまで造って着信を待ちかまえていたが、結局電話が鳴る事はなかった。