恋愛の神様
この会社の食堂は今話題の粗食を売りにしております。
べらぼうに肉などを使用していない所為か安い割にボリュームがあります。
しかも美味しい。
今日は何を食べましょう。
胸肉のから揚げはモモ肉よりアッサリしていて物足りないという方もおられますが、ここのはしっかり下味が染み込んでいて十分満足に値します。
共食いなどではありませんヨ。
ほぼから揚げ定食に決定しつつ、目の保養にケースを物色しておりますと、隣の人と肩がぶつかりました。
「スミマセン。」
ほぼ同時に謝って顔を上げた瞬間、ワタクシの胸は揚げたてのフライドチキンより熱くなりました。
多分四十代前半。
少し年嵩ですが、柔らかい面差しのジェントルマンです。
首からぶら下がっている通行証を見るに外部の方のようです。
私の視線に気づいたのかジェントルマンははにかみます。
「ここの定食が好きで打ち合わせついでによく寄らせてもらうんだ。安い上に美味しくて種類も多いから、いつも来るたびに迷ってしまう。」
サラサラと流れる川のせせらぎの様な物言い。
ドカン。
隕石衝突―――
恋と言う名の巨大隕石です。