恋愛の神様
野山小鳥
※※※kotori noyama※※※
ワタクシはその日、控室の一室にいました。
ラジオをバックミュージック代りに、雑誌を捲りながら、オムスビを食べております。
まぁ、聞き様によってはとても優雅なお時間です。
『コレで魅力的な腰のラインをゲット!!』という眉唾ものの通販記事に夢中になっておりますと、扉が開きました。
「お疲れ様でした。」
たった今、ラジオの生放送を終えたハクトさんが戻ってきました。
この間穴を開けたラジオの生放送は、一週間。
今日が最終日でした。
司会の方もさぞやほっとしている事でしょう。
ハクトさん、無口です。
寡黙とは聞こえがよいですが、単なる口下手です。
クールなアーティスト、として売っておりますが、実情は単に『イイ歳なのに人見知りのしゃべり下手』です。
司会の方が必死になって水を向けますが『……まぁ』『……はぁ』『えーと……』の返事のみで、まるで会話が成り立っておりませんでした。
映像ならまだしもラジオでそれって……聞いているほうがヤキモキします。
逃走した日は『バニーb』のナンバーを掛けてやり過ごしたようですが、ある意味これならいない方が気楽だったのではないでしょうか。
それでも人気絶頂アーティスト。
公開収録のガラス越しにはファンの黒集りができておりました。
歌も然ることながら、その容姿。
甘いマスクに白髪、赤い目の幻想的なキャラ。
女の子の心を鷲掴みなのです。
まだ夕方も早い頃ですが、制服のオジョウサン達、学校大丈夫なんでしょうか。
電話やメールでのアクセスもパンク状態だったとか。
ともかくラジオ放送は成功を収めたようです。