恋愛の神様
ハクトさんはワタクシから少し距離を置いたトコロに佇み、じぃっとコチラを見つめています。
「よろしければどうぞ。お茶もありますよ。」
ワタクシがそう言いますと、ハクトさんはトコトコと近づいてきました。
うんでもすんでもありませんが、無表情が心なし嬉しそうに緩みます。
間違い探しなら難解すぎます。
最初の頃はさっぱり分かりませんでしたが、最近はなんとなくわかるようになりました。
ハクトさんは、テーブルの上のオムスビを無視して、ワタクシの手にある食べ掛けのオムスビにぱくっと食いつきました。
もぐもぐと租借し、途端に顔を顰めました。
「………うめぼしキライ………」
「だからコチラをお勧めしたのに聞かないからですよ。」
呆れつつ、水筒のお茶をコップに注いで渡しました。
拉致されてから一週間が過ぎましたが、その間に分かった事と言ったら、ハクトさんがトンデモナイ偏食児だということです。
食べられないわけではなさそうですが、肉も魚も乳製品もハムなどの加工食品も好んで食べません。
ちなみに納豆やチーズや塩辛などの世の中でも好き嫌いが大きく別れるものは、当たり前のようにキライです。
とりあえず普通に食べられる物は野菜。
煮物より比較的、生野菜がお好みのようです。
朝からレタスを千切ってはぱりっ……ぱりっ…と無言で食んでいる姿はまさにウサギと言った風情です。
いや、でも、せめて色どりよいサラダに仕立てましょうよ、一応ニンゲン様なんですから…。
目下、ハクトさんの偏食に立ち向かうのがワタクシの目標となっております。