恋愛の神様
最初の日に、目を覚まさせようとワタクシと鳥の違いについて散々ご説明しました。
ところがです―――
『うーん……でも、鶴だって人間の姿で恩返しに来るわけだし……』
ピーが人型になってもありえなくはない、かも?と返されました。
恐るべき、天然!!
いや、でも、ピーさんの記憶なんて欠片もございませんってば!
そう言い募るワタクシをハクトさんは赤い不思議な瞳でじっと見据えました。その双眸は何やら確信に満ちています。
『……ピーはピーだよ。絶対。…でももし記憶がないんだとしたら、人に変わったショックで記憶喪失になっちゃったのかもしれないね。まぁ、記憶なんてなくてもいいけど、気長に待ってればそのうち戻るかもしれないから……』
心配しなくていいよ?と何故かワタクシが同情的な顔で慰められてしまいました。
話がまるで通じない事にワタクシは観念しました。
ほとぼりが冷めるまで付き合っていりゃいい、と腹を括り既に一週間。
まるで進展はありません。
突然扉が開いて、体裁の悪い状態のワタクシはビクッと飛び跳ねました。
それにハクトさんが、入室者にやんわり抗議の目を向けます。
「タツキ………ピーが怯えるよ。」
タツキさんはそんな抗議を余所に、ワタクシ達にちょっとばかり目を眇め、小さく安堵の吐息を洩らしました。
「ああ……ヨカッタ。今日も無事過ごせたみたいね。」
タツキさん、心労が絶えませんね……
ワタクシは人事のようにそっと尊敬と同情の念を送りました。