恋愛の神様
タツキさんはハクトさんが所属するプロダクションの令嬢で、ハクトさんのマネージャーをしております。
とはいえ、まだ高校生。
昼間はあのSP、沢蟹さんがハクトさんの送迎やら見張りを一任しているようです。
ちなみに沢蟹さんはプロダクションの方ではなく、雨宮家の、更に言うならお嬢様の世話役として勤める方らしいです。
最初の頃、ワタクシはタツキさんがいない日中を見計らって脱走を試みました。
そりゃ当然でしょうとも。
幾ら失恋直後で時間を置きたいといっても、こんな非日常にまで旅行したくはありません。
それにこのままでは済し崩しに一生をピーちゃんで過ごす羽目になりそうです。
ハクトさんはレコーディング、沢蟹さんに至ってはハクトさんを見張る役目は全うしますがワタクシまでは範疇外、と言った感じで特別監視もされていなかったので簡単に抜け出る事に成功致しました。
が。
ワタクシがいない事に気付いたハクトさんがのこのこ後を追ってきてしまって、無論、残されたスタッフは大わらわ……。
ワタクシは敢無くハクトさんに捕まり、学校を早退して駆けつけたタツキさんには二人してこっぴどく叱られました。
とはいえ、ピーちゃん捕獲に大満足のハクトさんはまるで聞いちゃおらず、常識のあるワタクシだけがズキズキと耳のイタイお説教に項垂れる羽目になりました。
チラっと見てしまったのですが、迷惑を掛けたスタッフさんに必死に頭を下げるタツキさん。
これでも会社を知るOLのはしくれですもの。
理由はどうであれ仕事に損害を出すような無責任な行動を反省しました。
それをタツキさんに頭を下げさせてしまったのも。
ごめんなさい。
そんなわけで今は迂闊に逃亡するのは見合わせです。