恋愛の神様

乗り出していた身を戻し腕組でタツキさんを睨めつけます。


「このお嬢様は、子供のくせにどこまでポーカーフェイスがお上手なんでしょうね。しかしそこまで来ると可愛げがありませんヨ。」

「アンタも私に負けず口が過ぎるわね。で?ポーカーフェイスってのはどーいうこと。」


お互い声を荒げませんが、その分だけ空気がパチパチと小爆発するような剣呑さを孕みます。

刺すような殺気を放つお嬢様にワタクシはあえて挑発気味に顎を聳やかしました。


「おや。ワタクシに言わせますか?ならばはっきり言わせてもらいましょう。タツキさん。アナタは―――ハクトさんを愛してらっしゃいますね?」


形のよい柳眉の間に深い皺が寄ります。

やれやれ。

このお嬢様の反応もハクトさんに負けず劣らず難解です。

だからこそアナタの心情をさし計るに、その僅かな反応でも十分なのです。


人の一生を背負いこもうとしたら生半可な覚悟では出来ません。

その想いはもう、恋などと言う浮足立った物を通り越し既に愛と呼ぶにふさわしいのではないんでしょうか。

でも、それは保護欲や慕情と言った親子間に存在する種類とは少し別のモノに相違ありません。


「ハクトさんがワタクシに触れるのを見るのは辛いんじゃないですか?」


扉を開けはなって安堵するに至るまでの一瞬、僅かに揺らいだのをワタクシは見逃しませんでした。


目を反らしたら負けだ、とでも思っているかのようにワタクシをじっと見据えていたタツキさんは小さく息を吐きました。


「アンタこそ可愛くないわね。…でも、その読みじゃ半分よ。」

「どういう意味ですか?」


小首を傾げるワタクシにタツキさんが手招きします。

それにノコノコ近づいて行ったら、いきなり腰にぎゅっと抱きつかれました。

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