恋愛の神様
アレから草賀さんからの連絡はありません。
勝手に逃げ出したくせにワタクシは図々しくも草賀さんからの連絡を待っておりました。
正直、お話をするのは怖い。
あの女性との関係を遺漏なく説明されるかと思うと身が竦みます。
ですが心のどこかでは、連絡をくれるのを期待しておりました。
あんな場面を見られてワタクシに対して少しくらいは体裁悪いと思ってくれるのではないかと……。
無様な男の顔で愚にもつかない言い訳を奏でてくれるのではないかと……。
ですが待ちわびた連絡は待てど暮らせどきやしません。
ワタクシはなんて愚かで滑稽な女なのでしょう。
草賀さんにとってワタクシは言い訳をしなきゃいけない相手ではなかったのです。
ワタクシレベルの単なる性欲処理なんて草賀さんには掃いて捨てる程いたに決まってますもの。
拗ねて姿を消したトコロで痛くも痒くもない存在だったのです。
ほんの少しぐらいは気に掛けて頂いているなどと、思い上がりも甚だしい。
ワタクシはどこまでオメデタイ人間なのでしょうか。
気付けば草賀さんからの連絡がない事にすっかり挫け、自分から連絡する勇気さえとうに失せておりました。
草賀さんとの接点を全て断ち切るように、結局、会社への連絡も入れず仕舞いです。
心の片隅では、いっそこのままピーちゃんとしての人生を全うするのも幸せかもしれない……などと人間としてあるまじき思考に陥る体たらくです。
ワタクシはいつの間にこんなに臆病な人間になってしまったのでしょう。
今までは失恋したところで二、三日もすればけろっと立ち直れたのに。
それはまだワタクシが未熟で、本当の恋を知らなかったから出来た所業でしょうとも。
甘い心のトキメキに鼓舞して相手に突進する―――その時点では、まだ本当の恋ではなかったのです。