恋愛の神様
雨宮龍妃
※※※tatuki amamiya※※※
『―――いや、聡明な上、綺麗なお嬢さんでお羨ましい。』
パパとお客さんが話をしている応接間をそっと覗いていた。
『きっとステキなお婿さんを見つけてくるんでしょうね。そうなりゃ、アナタ、将来は安泰だ。それとも息子さんの方に継がせるんですかね。』
悪気のない会話に、私は眉を顰めてそっとその場を離れた。
世の中と比べてみた時、ウチはかなり幸せな部類に属するんじゃないしら。
パパはDVでもなく、怠け者でもなく、寧ろ歳の割に格好よくて、会社の頂点でバリバリ仕事を邁進させている。
ママも綺麗で、多趣味で社交的。
でも二人とも自分の事ばっかりで私の事なんてこれっぽっちも興味がない。
これは私が手のかからない賢いお子さんだったから、でもあるんだろうけど。
いつも言われてた。
『タツキはしっかりしてるから、一人でも大丈夫だね?』
ええ。
私しっかりしているわ。
一人で何でもできるからアナタ達なんて要らないわ。
ずっとそう思ってた。
寂しかったのだと気づいたのは、五歳も離れた弟が生まれた時―――外出ばかりだった母親がずっと家にいて、ふにゃふにゃ動くだけの赤ちゃんに現を抜かしている姿を見て胸がチクリと痛んだ。
仕方ないじゃない。
赤ちゃんなんだもの。誰かの保護がなくちゃ生きていけない弱い存在なんだもの。
一人で生きていける私とは違う。
そこで感情的になるほど私は子供じゃなかった。
寂しさを理屈で抑え込んで納得した。