恋愛の神様

でも、その頃から耳に入るようになった他人の声。


『社長も後継ぎが出来てさぞ、安心でしょうとも―――』


他愛ない社交辞令にまんざらでもなさそうな父。

母の姿を見てジクリと痛んだ胸がまたジクジクと痛みだした。



ねぇ……それって、私の存在が無駄なものっていう意味なの?

後継ぎにもなれない私なんて最初から無用の長物だったとでもいうの?

パパを満足させるような婿を捕まえてくるだけが私の価値だっていうの?


だから二人は私に興味を持たなかったの………?




幼いころに胸に刺さった棘はそれ以来、抜けないまま。

確実に私の何かを腐らせていった。



執拗に私と親しくなろうとする相手を私は悉く嫌った。

どうせアンタ達、社長令嬢というステータスに興味があるんでしょう?
それとも芸能界っていう華やかな世界への邪な興味?

何でもいいわ、どうだっていい。

どうせ何の価値もない私に興味があるわけじゃないんでしょ。



拗ねて拗ねて世の中を斜めから見下ろしていたあの頃

―――私は野良ウサギと出会った。


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