恋愛の神様
「あれ……?タツキ。」
駆け寄ったタツキさんに小首を傾げたハクトさんは、そこでワタクシを見つけ、やにわに肩を竦めました。
「やっぱり飛べないと大変なんだねぇ……前のピーは直ぐに僕に追い付いたんだけどな……」
「スミマセン……って!無茶苦茶な要求しないで下さいっ!」
ワタクシの抗議を余所にタツキさんがハクトさんの前に毅然と立ちました。
「アンタ、何のつもりで逃げ出したの。仕事をほったらかしにしたらダメだってあれほど言ったでしょ?」
ハクトさんは「えー?」と無邪気に首を傾けます。
「だってタツキが降りるっていうからさぁ、もういいのかと思って……。」
「え?」
「タツキがついてきなさいって言うからついて行って、歌えっていうから歌ってきたけど、いいならもういいのかなって。だから僕はこれから好きな時に歌って、歌いたくない時は歌わなくていいのかと……。」
ははは。
つまり、『なーんだ、もう仕事しなくてもいいのか。遊園地行きたいから遊園地いってみよ♪』くらいの意気込みでここへ来たわけですね?
乾いた笑みしか出てきません。
タツキさんはいつになく困ったように眉を顰めて、阿るように言いました。
「あのね、シロ……もし私が留学しても他のしっかりした人がマネージャーになってアンタのお世話をしてくれるのよ。私も留学が終わったら必ず帰ってくる。だからその間、アナタにはしっかり歌い続けて欲しいの。」
「ん。んー………………タツキがそう言うならそうする。」
絶対嘘だ!!
素直に頷くハクトさんにワタクシもタツキさんも内心で即座に突っ込みましたとも。