恋愛の神様
そうか、母さん戻ってきたのか。
どこかくすぐったいような感覚と、まともじゃない残虐心が湧いた。
一度は僕を置いて消えた人。
だけど二度と置いて行かせない。
どこかへ逃げる前にいっそ僕がその息の根を止めてやるから。
そうしたら、いつまでも一緒にいてくれるよね―――?
鳥にピーと名付け飼いだしたら、またもや施設の人たちが何やら怒っていたが、いつもの事だしほっておいた。
施設の人たちはみんな礼儀ただしく清潔だけど、堅苦しい。そしてウルサイ。
母親が亡くなって直ぐにココへ引取られたけれど、その時には既に僕の身体は弱り果てていて、病院通いを余儀なくされた。
この白い髪も常に充血した眼も、その時の薬の副作用で、もう元には戻らないらしいけど。
手当を受けされてくれて、僕にしてみたら礼の一つでも言わなきゃいけないところなんだけど、ココで受けた治療の所為でこんな容姿になったなんて世間体が悪いと思っているらしく、これは全て先天的なモノ、だと、言い含められている。
義務教育を終えたところで施設からおっぽり出された。
とりあえず世話してくれた就職先で働いていたけど直ぐに止めた。
この容姿ではコンビニの店員なんて悪目立ちし過ぎるんだ。
昼間はピーに歌を歌ってあげて、夜ビルの清掃する仕事に着いた。
無駄に人と関わらなくてもイイし、中々快適だった。
とはいえ、根っから適当なので、呑気にピーと戯れてバイトを忘れたり、ふらりと散歩に出たきりすっかりバイトを忘れたり、…と何度かやってはバイト先を首になって、幾つか転々としたけれどね。
まぁ、僕とピーが食べていければ他に何もいらないから、それでも平気。
そんな調子でゆるゆると時は過ぎて行った。
タツキに出会ったのはそんな折。
『私についてきて』
自信満々にそう言った女の子について行ったのは―――気まぐれ。
なんかその強気な態度を見たら、大丈夫だって思えたんだよ。
いや、何が大丈夫だと思ったのか分からないんだけど……。