恋愛の神様

ワタクシは身体を命一杯伸ばして、草賀さんの唇に自分の唇を重ねました。

少し驚いたように相手の身体が強張りました。

ああ、お願いです。
今だけでいいんです。
逃げないで下さい。

そんなワタクシの願いが聞こえたように、草賀さんは振りほどく様子もみせません。

夢なのでワタクシの都合よく運びます。

拒否されなかったのをイイ事にワタクシは更に大胆にキスを強請りました。

しかし、これでは少し物足りませんね。

ワタクシはキスに耽溺しながら、いつものようにそっと手を這わせました。

布越しでも分かる熱っぽさ。

口づけだけでワタクシが逆上せてしまうように、草賀さんもワタクシに興奮してくれているのだと思うと安堵と同時に嬉しくなりました。


……でも……あらら？


悪戯の間にもワタクシの意識はどんどん覚醒へと向かっております。

草賀さんとはワタクシが逃げだしてからお会いしてませんよね？

……ですから、これは夢で、だから都合よく進むのです。

………しかし、何だかリアルな感触ではありませんか？

……ええ、何だかとってもリアルです。


確認するように手中のモノを傍若無人に触りました。



………………リアルです。


どわっと毛穴から嫌な汗が出てくる気配とともに、ワタクシは接着剤でくっついていたような重い瞼を一気にこじ開けました。

そしてあまりの現実味のなさに茫然自失しました。