恋愛の神様

じじじ……という音とともに出力口から出てきた紙を取り上げ、草賀さんはしみじみと言いました。


「いつにもまして不細工な。」


先ほどコピーされたワタクシは、白眼を剥いて魂の抜けかかった顔をしておりました。
志半ばで打ち取られた侍にも勝る無残な顔です。

でも草賀さんみたいな綺麗な人には、特に絶対突いて欲しくないコンプレックスです。

良いんです。
ほっといて下さい。

口に出す余力もなく内心でぶつぶつと思いながら、のろのろと顔を上げました。


ドキッ!


コピー機に片腕を突いて頬杖を突くような格好で草賀さんがワタクシを覗きこんでいました。
思いのほか肉薄していた顔にワタクシの心臓はうっかり誤爆しました。

殿方の顔をそんなに間近で見る機会がなかったこともありますが、その顔があまりにも整っていて。
その気がなくとも動悸が激しくなり、目がちかちかしてきます。


草賀さんはワタクシをマジマジと見詰めて改まった様子で言いました。


「チィちゃんってさー、恋だ愛だ言うわりに、オシャレには無頓着だよな。こないだの帰宅時の私服も野暮ったいし?あれでナンパされるとか絶対ないからな。」


ぐぅ!

痛いところを突かれました。

草賀さんは仕事で後輩を叱責するみたいに、いつになく真面目に、真っすぐ言いました。


「果敢にアタックする精神は悪かねーけど、自分を磨く努力ってヤツも必要じゃねーか?どんだけ数打ってみたって、魅力のない人間なんて論外。それは男も女もカンケーなく、だろ?」


ワタクシは眼鏡を直す振りで、俯いて唇を噛みました。

草賀さんの言うことは正論です。

ワタクシだって分かっているんです。


でも………

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