恋愛の神様
腹を決めるや否や、ワタクシはシンクに走りました。
勢いよく放水し、腕に垂れる肉欲の残骸を洗い流します。
きゃ~。
トップアーティストの精子~、試験管にとってタネ付けしちゃお~♪
……なんて、熱狂的なファンなら思うかもしれませんが、ワタクシはびた一文思いません。
希少価値のアーティストのモンだろうがなんだろうが、出してしまえば単なる残骸。
しかも、別に愛している人のモノでもありませんから、愛しさなどまるで感じやしません。
綺麗に手を洗った後、ワタクシはクローゼットへ行って上から下まで服を総着替えいたしました。
勿論、べっとり濡れた下着も。……うう。
しかしこれをどうしましょう。
置いて行くのも持っていくのも憚られます。
あ、本日は燃えるごみの日でしたね。
服を買って頂いた時に入っていた紙袋に汚れた寝巻と下着を詰め込んで、丁寧に封をして、ゴミ袋の生ごみの隙間へ隠すようにして押し込みました。
口を固く縛ったそれを鷲掴み、コートを羽織り――――
いざ、ワタクシは後ろも顧みず、猛然と外へ飛び出しました。