恋愛の神様

手に戻ってきた安心と、見たトコ元気そうな姿に、ほっとするやら、気が抜けるやらで、急に腹立たしくなった。


「……マエ、一体、どこ行ってたんだよっ!!」

「よかっ……草賀さん、…たすけ、くださっ……」

「今まで何してたんだ。何があったんだ!」

「みつか……ヤバくて…早く……」


互いにあるらしい言い分は、気が急いていてちっとも噛み合わない。

野山は何か切実に訴えてくるが、日頃の運動不足が祟ってかその場にへたり込みそうになっている。

でも少なくとも、俺から逃げ出そうという気配はなく、その事に少しだけ落ちついて野山の息が整うのを待つ。

余裕が出来るのと同時に、一方的に怒鳴ったのを反省した。

俺のしたことを思えば野山を罵る権利なんてないのに、心配した分腹立たしくなったんだよ。

……て、ホント、俺は野山に対して勝手だな。


「……ダイジョーブか?」


改めて優しく問うと、未だゼーゼー言っている野山はそれでもコクコクと頷いた。


「動けんならとりあえず帰るぞ。いつまでもこんなトコロにいたら冷凍になる。」


野山がぱっと顔を上げた。

何か言いたげな、少し泣きそうな―――縋りついてイイのか分からないといった困惑の表情。

俺はそれらを一蹴するように「連れて帰る。」と強く断言した。

今更、気まずいだのなんだのと言ってる場合か。

手を離してまた逃げ出されるくらいなら、とことんまで話して決着付けてやる。

このままなし崩しに別れていいはずはない。

そんな事は出来ない。

たとえ野山の方は割り切って今更だとしても、俺には言いたい事があるんだ。

……たぶん。

実際には考える前に野山に消えられて困惑したまま保留して結論なんか纏まっちゃいねーけど。

でも、ようやく戻ってきたコイツをこのまま手放していいはずない。

また逃げられたら絶対後悔すんだ。

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