恋愛の神様
何があったのかはさて置き、野山がいない間コイツの所にいたというのは何となく推測出来た。
にわかに苛々がレッドゾーンに跳ね上がる。
苛立ち紛れに野山を抱きすくめて心持ほんわかしている男を押しやる。
「オマエ、チィちゃん放せ。離れろ。」
ネコやイヌじゃあるまいに!
野山を当たり前のように抱きすくめるのも、俺が知らないところでなんかあったらしい事もとにかく気に障った。
怒鳴ると、赤い双眸が鬱陶しそうに俺を睨んできた。
「…アンタこそ放してよ。これはチィじゃなくて僕のピーだ…」
口調はどこまでののんびりしているくせに、いっかな怯む様子もなく、野山を囲う腕に力を込める。
……コイツ!!
「オマエのもんじゃねーよ!コレは俺んのだ!!」
「ひえっ」
鉄格子ごと野山を引き寄せる。
と、むっとしたらしい敵は対抗するように野山を引っ張った。
「ぎゃっ」
互いに力を緩めず、鉄格子越しに睨みあう。
「ぐ……ぐるじい……ですぅ…」
双方に引っ張られて野山が哀れっぽく呻くが、力は緩まない。
当然のように相手も緩めない。