恋愛の神様

相手はさて置き、主役は今をトキメク歌手のハクトさんです。

凡人の画像ならいざ知らず、噂は簡単に広まることでしょう。

今回は顔を出していませんが、顔が出されたらワタクシの人生はどーなってしまうんでしょう。

熱狂的なファンの手によって、呆気なく海に沈む姿が目に浮かびます。

脅しじゃないわよ。

そういって顎を聳やかすタツキさんも目に浮かびました。

ええ。
脅しじゃないんでしょうとも。

ハクトさんの為なら何でもするタツキさんですもの。

ワタクシを社会的抹消したところで易々と捕まえて籠の中で飼殺すおつもりですね!?

ええい。雨宮龍妃さん。
その歳に似合わずどこまで小賢しい娘なんでしょう。

ワタクシは身を翻しました。


「どこ行く気だ!」

「どこって、タツキさんのトコロに決まってます!!話を着けてきます!」


コレはヤバイ事態です。

帰る気はさらさらありませんが、妥協案を見つけるなりして、最悪の危機を何としても阻止しなくてはなりません。

ともかく一旦帰らなければマズイ事になるのは目に見えております。

慌てて靴をつっかけて外へ飛び出そうとしたところで、後ろから伸びてきた腕に玄関を閉められました。


「草賀、さんっ…!!」


緊急事態なんですよ。
邪魔しないでくださいませ。

半ば詰るように訴えたワタクシに草賀さんはぐっと眉を顰めました。

いつもからかうように浮かべられている微笑もなく、怖いくらい真剣な顔です。


「フザケンナ。行かせると思ってんのか。」

「ですが…っ!」

< 274 / 353 >

この作品をシェア

pagetop