恋愛の神様
叫んだ時には腕が掴まれ、部屋に向かって引き摺り戻されておりました。
「草賀さんっ…………っわわ!」
リビングのソファーに手荒く投げ付けられ、驚いて起き上がります。
しかし非難を浴びせるより早く、ワタクシの唇が塞がれ、再びソファーに押さえつけられました。
―――どうして?
ワタクシの頭はすぐさま許容オーバーの混乱で一杯になりました。
何故今更……
草賀さんにはアノ女性がいらっしゃるのに何故、こんなキスをするんですか?
ワタクシの全てを呑みこむみたいな激しい口付け。
もう、ワタクシなど用無しでしょう?
それより何故こんなに怒ってらっしゃるのですか。
これまで多少強引なトコロはありましたが、腕力にモノを言わせた事は一度もありません。
だけど、今は抑え付ける手にも容赦はありません。
男の方の力を初めて目の当たりにして、ワタクシもさすがに少し怖くなりました。
どれほど暴れてみてもとても適わないのですから。
―――ああ。それなのに…。
混乱し、刺すような草賀さんの苛立ちに怯えながらも、貪られるようなキスの感覚にワタクシの心と体は有無を言わさず喜ぶのです。
触れた途端、熱に溶けるチョコレートみたいにワタクシはどろりと溶けてしまいます。
草賀さんにはあの方がいらっしゃるのに……
パブロフの犬みたいに無条件で草賀さんを求めてしまうワタクシは何と愚かで卑しい女なんでしょう。