恋愛の神様
「………泣く程、ヤだった…?」
タツキはぎゅっと眉根を顰めた。
「イヤじゃなくても泣けてくる時があんのよ!!」
……分かんないけど、とりあえずイヤじゃなかったってことでいいのかな。
「私からも一つお願い――――抱きしめて。」
言っている間にもタツキは僕にしがみ付いてきていて、受け止めるように背中に腕を回した後の「うん」は我ながら間が抜けていたと思う。
抱きしめたタツキは意外に小さくて、華奢だった。
普段の態度がデカイからかな、もっと大きいと思ってた。
それこそ僕をすっぽり包むくらいね。
だけど本当のタツキはこんなに小さかったんだな……。
こんなに小さな身体でこの娘は僕の事を守ってくれてきたんだ。
そう思うととてもタツキが愛おしくて、
―――そしてちょっと悲しくなった。
「でもタツキは僕がトップスターじゃなくなったら一緒にいてくれないもんね……」
タツキが必要なのはパパ達に一矢報いるためのスターという存在。
そうじゃなくなったら、僕なんて用無しなんだよね。
タツキはピーじゃないから、ただの僕とは一緒にいてくれないよね。
小さく呟くと、腕の中でタツキは一拍置いて「そうよ。」とはっきり言った。
その応えにがっかりしていると、胸に擦り寄っていた顔が持ち上がった。
濡れても意志を秘めてキラキラと瞬く強い双眸が僕を捉える。
まるで手を差し伸べてきたあの時みたいに――――……