恋愛の神様

慌てて目を反らしましたが、もはや時遅し。

男は脇目も振らずワタクシに直進し、デスクの上に資料を積み上げました。


「スマン!悪い!ゴメンナサイッ!月曜日の朝一の会議までにどうか宜しくお願いしますぅぅ。」


土下座の勢いです。
いや、足に縋りつく男、既に泣いてます。

しかし、そんなものに惑わされるワタクシではありません。

会議など知ったこっちゃありません。
ワタクシには人生がかかってるんですよ!?


「いやです。」


取りつく島もない拒否に、男は声を上げて泣き出しました。


「野山。」


課長が割って入ります。


「ソイツのボンクラ加減は思う存分罵ってやればいいが、仕事はやってやりなさい。」


馬場課長、女性ですがさばさばした性格で、口はとってもストレートです。
イタ過ぎです。
でもワタクシも課長の前半部分には同感です。


「ですが課長……」

「やれ。」


鶴の一声ならぬ、課長の鋼鉄の勅命。


「……………はい。」


威圧感を増した課長に反抗する術はなく、ワタクシはがっくり肩を落としました。


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